久しぶりに展覧会レビューを2本。自身のメモのために。
まずは、新国立美術館で開催中のアンドレアス・グルスキー展。
GURSKYの写真に初めて出会ったのは、ポンピドゥーセンターでたまたまやっていた、彼の巡回展での事だった。3、4年前の事かな、と思っていたけど、よく考えたらもう10年以上前の事で、私は20代に突入したばかりの、そんな頃。
フランス語はもちろん、英語でだって展覧会の概要や作家の略歴なんかを読むのは、一苦労。。その時も、たぶんもう辞書を鞄から出すのにもすっかり疲れて、全ての説明パネルをスルーして、いきなり展示室に入って、そして。
ものすごい衝撃。
その時の展示は、確か特に大きなプリントのものが多くて、写真のスケールと視野に文字通り「圧倒」されたのをとてもよく覚えている。
興奮して重い写真集を日本に持ち帰ったけど、写真集を開く度、グルスキーの写真は、やっぱり手の中には収まらない。実物のプリントのスケール、色、空間との兼ね合い、全てが揃ってこその、グルスキーなんだよなあ。
そんなはがゆさを抱えて、日本での初めてのグルスキーの個展が開催されるまで、まさか10年以上の月日がたっていたとは。。
今回の展示では、入り口で作品の簡単なリストが渡されるだけで、それぞれの写真にキャプションがついていない。そして展示順も、シリーズでまとめられているでもなく、年代順で並べられるでもなく、ランダムに並んでいる。
何の情報もないまま、ただただ視覚だけが刺激される空間は、私があの時ポンピドゥーで全てのキャプションをスルーした(読めなかっただけ)あの時と同じ。
グルスキーの写真は、「今まで見た事ないものを見せられる」というのとは少し違って、「今まで見た事のない視野で見せられる」というのに近い。
日常の一場面であっても、時に、絵画的に時にドラマチックに、時にデザイン的に、時に叙情詩的に。
「かっこいいなあ。私やっぱりグルスキー好きだなあ」と改めて実感できるような、そんな展覧会。手の中に収まらないとわかっていても、つい買ってしまった展覧会の図録が、意外にも結構よくて、こちらもおすすめです。
そしてもう一つは新宿オペラシティで開催中のこちら。
9人の個人コレクターのコレクションを9つのパートに分けて紹介するという展示。
それぞれコレクター個人の詳細が語られることはないが、彼らがどのようにコレクションをするに至ったのか、その辺りのバックグラウンドと共に、それぞれのコレクションを見せてもらっていくような構成。
それぞれのコレクションから個人の趣味や、思想をかいま見ることができて、そのコレクター自身の人物像にも興味が湧く。
たぶんこの展示を見る人全てが抱く「これらは。。いくらで買ったものなんだろう」という疑問には、一切答えられることはなく、アートをコレクションする、という事が身近になる、ということは残念ながら望めないが、アートは美術館で鑑賞するだけのものではなく、実はお金を出して「買う」ことができて、それを自分の「手中に収める」ことがきて、その経済活動が、「若い作家の制作活動を助ける」という事が、一応提示されています。
やっぱりもう少し、気軽にみんなが作品を買えるようになるシステムが必要よね。
ギャラリーでアートを買うのはやっぱりまだまだ敷居が高いし、アートフェアだって1年に数回しかないし、ネットの市場もなかなか広がりを見せないし。。
アートアート唄ってる伊勢丹あたりの地下2階あたりを全部アートマーケットにしちゃって、若手の手頃な値段の作品もいっぱい置いて、いつでも誰でもアートが買える、みたいな状況ができないと、なかなか「コレクション」には踏み切れないよね。
ウォーホールのシルク、450万で売られても、現実感無さ過ぎます、伊勢丹さん。